採用調査に対する考え方 9/9
アイビー(日本アイビー)・リック事件
アイビー・リック事件とは、平成11年3月に発覚した、興信所による部落差別事件であり、その事件に関わった興信所2社(㈱日本アイビーと㈱リック)の社名からアイビー・リック事件と呼称されるようになった。
事件発覚の発端は、㈱日本アイビーの社員が退職に際し、大量の調査報告書と履歴書を無断で持ち出し、それを材料に、会社に脅しを掛け、金にしようと試しみた。ところが思うような結果にならず、会社への反発心も手伝って、部落解放の運動団体に駆け込み、直訴に及んだ事が発端となった。
当時の株式会社日本アイビーは、本社を大阪に置き、近畿地区を中心に各法人企業から人事調査、中でも採用調査を中心に受注し、数十億の売上げを上げていた府下有数の興信所であった。ところが、同業界とは全く交流を持たず、業界団体にも加盟せず、独自路線を歩む不透明な会社であった。また、創業社長の超ワンマン企業で、社内体質は古く、昭和50年の地名総監事件以前の興信所にみられた、人権感覚と調査手法を色濃く残し、依頼事項で無いにも関わらず、土地柄や家業を調べ、被差別部落と判れば、その旨を口頭やメモで依頼企業に報告していた様である。
一方、その報告を受けた企業も、差別調査は依頼もしなければ、採用に際しその様な差別をする訳でもないが、報告を一方的に聞き置いた、と言う所があった様である。
当時大阪府下には、興信所、探偵社を対象とした調査に関する「条例」が制定されており、居住地区が被差別地域で有るか否かの調査報告が禁止されていた。そこで、大阪府は、条例違反の疑いがあるとして調査に乗り出し、800社とも言われる日本アイビーの取引先企業を呼び出し、事情聴取を実施するに至ったものである。