リファレンスチェックのミスマッチ
リファレンスチェックを採用する企業が増えてきている。
リファレンスチェックという言葉は人事担当者であれば知っている方も多いと思うが、求職者のことを知っている人(前職の上司や同僚、部下などが主流)に、採用側の企業がその人の評判を聞くというもの。何も新しい仕組みというわけではない。例えば大学のゼミの教授が、知り合いの企業の人事担当者に自分のゼミ生を推薦する(理系の企業と大学間ではよくある)ことや、知り合いを自分の会社に誘い、誘った本人は会社の人事部長にその人を推薦するということもリファレンスチェックにあたる。昔は親戚の娘・息子さんを自分の会社に口利きをして入社させる、いわゆる縁故採用などもあったが、それもリファレンス採用と似たようなものだ。
ね、聞いたことあるでしょう?
ではなぜ、今そのリファレンスチェックがさも新しい手法であるかのように「再登場」しているのか。
それはそもそも中途採用(経験者採用)市場自体がここまで大きくなったことが日本においては過去ないからである。考えてみてほしい。日本はこれまで終身雇用制度だったわけだ。今の60代以上は就職当時、終身雇用が当たり前で途中転職したとしても1回。2回以上になればもうその時点で問題児と見られる時代だったのである。だから、先程リファレンスチェックの例として出した大学の先生が生徒を企業に推薦するとか、縁故採用とかは全て新卒入社の時の話だ。
しかし中途採用が当たり前となった現代においては、新卒採用時に使われた縁故や、知り合いの推薦などが中途採用時に必要となってくるわけである。
さて、活用場面を変えて「再登場」したリファレンスチェック。すんなりと採用選考過程に組み込まれ始めたかというと、そうではないらしい。ベンチャー企業や急激に組織を拡大しようとしている企業、また大手企業の新しい取り組みとして取り入れられ始めて入るものの、うまくいっていない理由は大別して以下の2つ。
1,収集したリファレンス情報が思ったものとは違ったというミスマッチ。
2,求職者側の拒否。選考フローの複雑化による内定までもスピードの鈍化。
2に関してはシステムの改善や社内や応募者への浸透によって改善の余地がある。
1に関してはそもそも論であるがよく聞く。これは何が「ミスマッチ」だったのか。
それはおそらく、もう一つ世の中にある「バックグラウンドチェック」と「リファレンスチェック」を混同させていた場合に起こっていると思われる。リファレンスチェックは先程来説明したように縁故や推薦という「採用における後押し」としての側面が強い。それに対しバックグラウンドチェックは「採用における精査・確認」の意味合いが強いのである。つまり、「うちの〇〇部長が知り合いの息子さんだって紹介してきた人がいて、面接今度するんだけどさ。なんだか転職回数も多いし、うちとは全く違う業界だし、ほんとに大丈夫なのかってさ。」という場合に、その人の前職の評判を聞いたり、本人が提出してきた過去の実績などを確認したりするのがバックグラウンドチェックなのである。
ちょっとニュアンスが違うのがお分かり頂けるだろうか。
そして御社で求められているのはどちらだろうか。
またそのニュアンスは承知の上でリファレンスチェックを実施して、「なんか違う・・・。」となる場合がある。それは昔の教授の推薦や知り合いの口利きのイメージでリファレンスチェックを捉えている場合である。え、リファレンスチェックってそっちのイメージでしょ?だってそう冒頭で説明してたじゃないか・・・。おっしゃるとおり。しかし現代のリファレンスチェックが昔と違うもう一つの大きな点としては「推薦者が被推薦者に対して責任を持たない」というところにある。昔であれば、自分が口を利いて入社させた人がすぐ辞めたとなれば、口を利いた側の面目丸つぶれ、場合によってはその人自身の信頼を失うことにもなる。そのため推薦者側も、被推薦者側もそれぞれに責任を感じた上で入社をしてきたわけである。その相互責任関係が今はない。むしろ紹介者にそこは責任など一切もとめないから、紹介してよ、という「気軽さ」すら売りにしているサービスもあるくらいだ。
リファレンスのもっとも根幹は「その人が誰であるかを第三者が補完する」ことにある。むしろ保証する、とまでいきたいところだが、そこはまあ譲歩するとしよう。しかしその「補完」自体が何の責任も担保にもならないチェックなど、どれほどの意味を持つだろう。
自社が求めているサービスと、サービス提供側の根本が合致しているかどうか。その確認を怠らないのはサービス導入においても人の採用においても共通する部分である。
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