老いらくの恋に行動調査
老いらくの恋、というと何歳くらいのことを思い浮かべるだろうか。
老人ホームでの心中事件などが報道されるのを聞けば70,80代の人たちを思い浮かべるか。
それとも5,60代くらい、定年前後を思い浮かべるか。
弊社の仕事の1割程度だが、行動調査というものがある。
尾行、張り込み等の調査を指すが、そこで追跡する人たちの平均年齢を考えるとおそらく50歳代になる。
行動調査を専門に行う探偵社はまた違うかもしれないが、弊社は企業からの依頼が大半のため、行動調査の内容としては以下のようなものが主流となる。
・業務上横領、産業スパイ、取引先との結託など
・昇進、昇格にあたっての懸念事項調査
・役員の不祥事、不倫問題など
そのため必然対象年齢は上がってくるのだ。
そのなかでも後味が悪いのが異性関係での問題、要は不倫問題である。
他の問題に比べて圧倒的に計画性がない。意図的ではない分、罪が軽いのではと思ったりするが、社内や取引先の異性関係問題による混乱は、周囲を巻き込んで大事化することも多い。
「ここまで積み上げてきたキャリアをこんなことで・・・」と呟く調査メンバーは、ここ数日どことなく不機嫌である。
悪いことをした人が断罪されることは正しい。
正しいことをやらせてほしい。
単純な方程式じゃないか。
しかしその単純な方程式を当てはめてみたところで、調査結果にやりきれない気分が残るのは如何ともしがたい。この報告書がその後の対象者に対してどのような意味を持ってくるかは自ずと想定される。
また、行動調査はときに調査自体思うように進まず、顧客から調査の質に疑念を持たれたり、収穫が何もなかったり、下手を打って窮地に追い込まれたりする。調査を行う当事者としては刑事ドラマを見るような気分では到底出来ない。
無事終わった調査くらい、そっとしておいてくれ。
連日の調査で疲れ切った調査員から発せられる無言のメッセージを引き継ぎ、報告書を持って顧客側との折衝をするのは営業の責任である。
報告書を挟んで向かい合い、この結果を持ってさてこの問題をどのように対処していこうか。ふと顧客の視線がこちらに定まっていることを感じて、悟る。
ここからがスタートだったか・・・。
数週間後、これで終わりと思って報告に行った営業がしばしば陥る夢オチのような瞬間である。
創業45年~企業専門の調査会社~