調査コラム

企業サービスの調査コラム

元経験者は使えない、について

コラム 2024/12/30

 中途採用で同業他社経験者を採らないという会社がときどきある。そう珍しいことでもない。変に慣れがあったり昔の会社のクセが抜けなかったりと、下手をすると新人より扱いに困ることがあるからだと思われる。
 弊社もそうである。というか、この仕事における経験者などほとんどいないため、必然誰もが未経験者となる。しかし弊社の属する業界を「調査業界」として広く見たとき、同業他社や近しい業種の経験者を積極採用する先は多い。一つにそれは警察官。警部以上クラスとなれば、それはもはや役員や顧問として就任を打診する例も多くある。しかしここでも弊社はあまり積極採用はしていない。「尾行張り込みはできても、調査はできない」というのが昔からの不文律であったからだ。おそらく警察手帳一つですんなりと入手出来ていた情報が、民間では四苦八苦してもまだ入手できるかどうかである場合も多い為ではないかと思われる。(その逆も当然あるが。)

しかし今年、不思議な人に出会った。
2024年の個人年表を作るとしたら、その人に出会った年と記載するであろう。
仮にその人をA氏とする。

 若いな、第一にまずそう思った。関東の業者が中心となって立ち上がった業界関係の記念パーティーで出会ったその人(以降、A氏)は、いっても三十代前半に思われた。これまで業界関連のパーティーでお会いするのは50代以上が中心。下手すると80代でも矍鑠としていたりする。そもそも調査業の業界団体が結成され、その動きが活発であったのは昭和50年代後半~平成初期。部落問題などを発端に、まだ「興信所」と言われていた調査業界のありようが問われた時代のことである。業界団体自体の揉め事も多く、その後幾度となく離合集散を繰り返し、当時若手と言われた人達が今、協会の中心になっているが、それも歳を重ねてきていた。

 そのような中で異色のA氏、聞けば二課(組織犯罪対策課)を中心に十数年警察にいたとのこと。そのうち半分はマル暴にいたという。ということは三十代後半ではあるのか・・・。どちらかと言えば優しげな印象のA氏がマル暴刑事であったとは意外であった。そして当時、珍しく企業調査で反社関係の案件を抱えて行き詰まっていた自分はふと、この人に聞いてみようと思い立った。請け負う案件には当然機密保持の責任がある。かつ、警察を退職しこの業界にいる人は一癖も二癖もあるという触れ込みもあり、二の足を踏まないではなかったが、当時はそうも言っていられない状況でもあった。
 固有名詞は出さず、依頼主につながる情報は伏せて反社組織について聞いてみた。結果、調査の答えになるようなことは何も分からなかったが、道筋だけは分かった。少しだけ調査が前に進み、そうするとそれがきっかけとなって他に情報を入手することにも繋がり、なんとか頓挫しそうだった調査は一応報告書となって決着をみた。
 

 その時、ああそういうことかと分かったことがある。
 経験者にその道のことを訊ねる時、答えを知りたいと思って聞かない方がいい。答えがそこにあると思うから、期待が外れたり、出来ないやつと言われたりするが、場所・時・人が変われば全部答えは違う。経験者が示せるものは、答えではなく道筋だ。そしてその人の経験から導き出した道筋を信じて進んでみる執行役がいて、答えを掴めることもあればそうでないときもある。
 

 A氏は初め「俺、何も知らんっすよ」と言った。「けど、力になれることがあれば協力します」と。それは言い換えれば自らの経験が答えにはならないが、道筋なら示せるかもしれないということだったのだと今になって思う。経験者は往々にして「ああ、その業界はね」とか「そういう類のやつは…」と見解を述べる。それは経験者に物事を聞く側がその答えを期待して聞いているのだから当然であるし、それで需要と供給は満たされている。しかしそれが報告書になるかと言えば、ならない。感想を述べ合っても、経験値を語り合っても、問題は眼の前にある別の人の調査であり、それがぴったり当てはまることなどないからだ。世の中に二人と同じ人がいないように。

 今も時々質問をする私に対して相変わらずA氏は「全然何も出来んっすけど」という。それは謙遜ではなくある意味正しい。
 しかしそれが土台になると分かっているほどには”稀有な”経験者である。そしてその経験者にどう対峙するかは質問者側の問題でもある。

                                

                                2024年12月30日最終投稿

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