調査コラム

企業サービスの調査コラム

目的のない調査依頼

コラム 2024/06/05

 いつも用件だけをメールで送ってくる顧客がいた。
調査会社を使っていることを知っているのはうちの会社では社長と秘書の自分だけだから会社近くをウロウロするなと警告され、こちらもメールだけで報告を送った。緊急に伝えるべきことがあり、携帯番号に電話をかけると「プライベートにかけてくるな」と即切りされたあと、メールでクレームが届いた。何かあった際、はしごは外されるだろうと思ったので、そもそも高いところに登るような調査はしないように、淡々と依頼されたことのみに対応した。

 数カ月後、いつもとは違う調査依頼が届いた。取引先の調査とのことだが、個人でコンサル業をやっているらしい男性のバックグラウンドチェック依頼であった。履歴書も職務経歴書もなく、いつもの調査ができないとメールを送ったら、事情を話すから都合のつく日に来てくれと返信がきた。

 初めてお会いするその人は小柄で、白いシャツとグレーのスーツで、黒髪が長い人だった。もっと刺々しい人が出てくるかと思ったが、意外にも目立たない、お茶を出す仕草が丁寧な気のつく雰囲気の人だった。その気を使う先は限られているのだろうとは思ったが。

どうやら彼女は騙されたらしい――。
数分後、私は彼女の話をメモに取りながら思った。取引先の調査なのだとビジネスライクに話をしようとしたのははじめの数分のみ。あとは、自分の今置かれている状況の苦しさと、相手の不透明さと、問題が発覚することのへ恐怖で、不安な心境を吐露する話が続いた。そしてそんな状況の中ですら、いち調査業者に己の恥を話さねばならないことが不本意なのであろう、急に言葉遣いがキツくなるときがあった。

気の強い人であったのだろう。
その強い人を相手に、このコンサルタントの男性は、頑張らなくても良いよとでも言ったか。守ってやるとでも言ったのか。

 その調査は結局受けなかった。
 情報は名刺一枚で、会社は実質的には関係がなく、彼女個人の付き合いで、予算もなく、目的もなかった。彼女が相手を罰したいのか、助けたいのか、すがりたいのか分からなかった。

調査はその結果を何に使うのか、目的を聞かなければ、着手はできない。
犯罪に使われでもしたら一大事だからだ。
言われたことだけやってくれればいいんだ、と言う依頼主はたまにいるが、それは出来ない。
自分たちが扱う情報の重要性を誰よりも把握しているからだ。

誰でも出来る仕事だが、誰でもやっていい仕事ではない。
創業者の言葉を改めて胸に刻む。

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