調査コラム

企業サービスの調査コラム

仕事に対して忠実な人

コラム 2022/12/17

弊社は採用前調査(バックグラウンドチェック)を仕事の半分以上が占めるため、お取引先の方は会社の代表者や取締役という会社のトップ・責任者に加え、人事部長など、採用・人事の采配を握る方が多くなる。そのため各社の採用のみならず、企業文化や教育制度などについてもお伺いする事が多い。そのような中で、最近、印象深い話を聞いた。

「人事部は会社のために仕事をしているのではない。従業員のために仕事をしているのだ。」
とある数百名規模のホールディングスの人事部トップの方の言葉。会社の人事を司るその方は、当然経営者の考えの体現者、会社の代弁者だと思っていたので一瞬、真逆じゃないかと驚いた。

ただ、この言葉の真意は以下エピソードに詰め込まれている。

この人事部長が昔、営業チームを統括していた時、そのチームの課長(女性)が子どもが熱を出すなどし頻繁に早退をすることがあった。そしてその度に、課長の仕事をチームの部下が行っている。事情を聞くと夫(公務員)が、子どもの早退を迎えに行こうとしたときに
「そんなのは奥さんに行かせればいいじゃないか。何のためにこれだけの給与渡してるんだ。お前がしっかり働いて出世し奥さんが仕事辞めても楽できるように頑張らなきゃいかんじゃないか。」
という趣旨のことを言われ、夫は出世のために今休むわけにはいかないということだった。途中からその課長はポロポロと涙を流し、そんな状況だから課長職からおろしてほしいと言った。それを聞いた部長は「事情はわかった。ただあなたの仕事を部下がやっている状況はよくない。今度その状況になったときは私に言え。私がその仕事をやる。」と言ったそうだ。

部長は言う。これが解決策ではない。

ただ昨今面接で「女性の活躍の機会は平等か。結婚して子どもを産んでも働き続けられるか。」という質問をする人には必ずこう聞くという。
「会社は男女平等だが、家庭は男女平等ですか。」と。

会社がどう体制を整えようが、夫と妻の間で平等でなければうまくはいかない。どうしても状況が追い詰められると、自分の主張を通したくて「会社が〇〇をしてくれない」「〇〇は対応してくれるんでしょうか。」という責める態度になる。攻める、ではなく、責める、だ。人事部は会社のために仕事をしているのではなく、従業員のために仕事をしているので、当然出来る対応はするし努力は惜しまないが、そちら側に立つ我々ですら、責める姿勢でこられたらそれはおかしいと言うだろう。会社にもルールがある。本来「〇〇してもらえませんでしょうか」とお願いをすることですら、「〇〇出来ないんですか?」とこられたらそれは違うだろうと言う。

 この話を聞いた時に、どちらの味方とか、どちらの代弁者ではなく、この人事部長は自分の考えをしっかり持っており、その指針に則って仕事をしているのだ、と感じた。仕事に対して忠実である、というのは会社に対してとか、従業員に対して、ではなく自分がこれまで学び考え悩みぶつかってきた「人事」という仕事に対して持つ信念に対して忠実なのだ。仕事とはその立場や役割に応じてあるものだが、そこに自分の心がなければ、その仕事はやらされているだけでいつか辛くなる。辛くなった時、仕事だから仕方がない、と言ったり、心を無くして表面上の対応をするが、そもそも初めからそこに心など無かったのではないか。

自分自身、仕事に忠実であるだろうか。改めてそれを考えさせられた話だった。

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